2009年チョコ戦線



森永製菓は「逆チョコ」で「男性から女性へ」に絞ったが、江崎グリコは「もっとフレンドリーバレンタイン!」でもっと気軽にみんな買おうよと言っている。不二家も"友チョコ"から高級チョコまでを揃えているらしい。とにかく各社とも2月14日を1億3000万人がチョコを買いまくる日にしたいらしい。みんなで送りあうんだから、お返しの日である「ホワイトデー」はいよいよ意味がなくなる。

「ホワイトデー」はへんだ。「バレンタインデー」に対するお返しの日として発明されたが、いっこうに流行らない。いくつかの理由があると思うけれど、一番は「チョコに対するお返しとして適切なものが見つからない」だと思われる。だって、しょせんチョコだ。かしこまってお返しするほど高価なものではない。高級時計をお返しした、とかなるとただの「貢いでいる男」にしかならない。とはいえチョコである。「マシュマロ」や「クッキー」を返されても、おそらく受け取った女性は戸惑う。戸惑うしいらない。チョコは、つまり、どういうわけだか替えのきかないポジションにいるのである。「高級ではないが、低級でもない」のがチョコである。




ネスレは「キット、サクラサクよ。」と今年もいっている。受験シーズンの合格祈願だ。しかし「きっと」っていう「大丈夫だと思うけど100%とは言わないよ」という言葉のリアルさ、繊細な優しさに比べて、やはり「かつどん」はすごい。「俺に頼れ」と言うその背中が少し筋肉質であることまで、この4文字から伝わってくる。だが少し方言っぽい。そこをどう捉えるかだ。いや、そんなことを言いたいのではなかった。というわけで、キットカットは今年は郵便ポストに投げ込めるらしい。

グリコはネットでバレンタインセットを売っているが、ネスレは郵便だ。そもそも競争の激しいバレンタインデーではなく、その直前に繰り広げられる「受験戦争」に焦点を絞っているネスレである。なかなか着眼点が新鮮だ。バレンタインデーの直前に日本中にチョコレートを行き渡らせ、14日には「飽きたねー」と言わせる作戦だ。少なくとも郵便局員は飽きる。「仕事中、なぜかつねにチョコの匂いがする」からだ。




このようにさまざまな企業が、バレンタインデーを我がものにしようと蠢いている。ゴディバとは違う、市井のチョコレート企業の宿命だ。しかしさらに上を行く企業があった。ロッテである。「ロッテ バレンタイン」とグーグルで検索してみればよい。チョコレートについて知ろうとする僕の向上心は、ボビー・バレンタイン監督によってあっけなく踏みにじられる。千葉ロッテの監督だった。千葉大で客員教授までしている。選手を怒鳴りつけることはほとんどなく試合に負けても励ますのだが「目は全く笑っていない」らしい。Wikipediaには何でも載っている。ふむふむと思っていたら、チョコの話題はすっかりどっかへ行ってしまった。よほど注意していても、私たちは無意識にチョコのことを忘れてしまう。それくらいさりげなく、ロッテはバレンタインデーに小さな異議を唱えているのである。




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